ジェット(黒玉)とは

写真 : 日本産出天然ジェット

原石の上部に手彫り

ジェット(Jet・和名:黒玉) は、太古の時代に群生していた樹木や植物が海水や湖水に堆積した黒い有機物質の層です。樹木単独で樹液による粘性を持ち堆積物に埋もれ地底深くで化石化する場合もあります。当時の堆積した樹木と他の動植物も含めてできた黒い堆積層は、石炭の形成プロセスと非常に似ていますが、樹液や他の生物や植物の油分による粘度があるため石炭ほど脆くありません。そのため彫刻が可能で磨かれると漆黒の光沢をだします。

人々は数千年も前からジェットを儀式の道具としたり薬として扱ったり不思議なパワーを持つ石として重じてきました。更にお守りにして身にも着けられ、後に宝石・ビーズなどの宝飾品等にも利用されてきました。ジェットは適度な硬度と鉱物に比べ驚くほどの軽さが魅力でジュエリーとしても琥珀と並び数少ない有機物の宝石の一つとされています。別名黒琥珀とも呼ばれます。


ジェットは石炭と外見は大変よく似ていますが形成されるプロセスに違いがあります。

石炭の場合、大量の木が沼地などに埋められた時に層ができます。その埋没した樹木が圧縮・加熱され炭化が進み石炭層へとなります。プロセスとして、この石炭層でジェットは形成されません。(ただし、石炭の形成で褐炭→瀝青炭→無煙炭(石炭)になる過程で粘結性が、非粘結→強粘結→非粘結となるので、この強粘結レベルである瀝青炭の一部にジェットに似た特性のものをジェットとして現代では認められているようです。ただし砕いて樹脂で固めたりの加工用があるみたいで単品での性能をみるとジェット扱いには多少疑問が残ります)

ジェットは樹木や他の植物やブランクトンが水に流され海底・又は湖底に沈み腐敗分解せず化石化が進み、周囲の豊富な油分を含んだ有機物などの沈殿物に覆われ堆積層が形成され更に圧縮・加熱されます。


 この形成された石炭層に類似した堆積層は、周囲の環境の影響を受け、樹液を持つ木や藻類・プランクトンなどの豊富な油分を持つ有機物の腐敗によって放出された油を吸収し、化石化が進むと石炭層の形成とは別の道を歩みます。このプロセスの進行によりジェット内部は均一な状態となり、石炭の破砕性とは対照的な靭性を持ちます。

イメージで例えれば瀝青炭は重くて硬く、衝撃を与えて割れた面には艶がありますが、砕いたり削ったりしてゆくと黒い粉になります。(砕けた粉は炭化した黒い粒子)

ジェットは非常に軽く、砕くと大まかに割れてゆくという違いがあります。(割れて欠け、削ると茶色い粉がでるのが特徴)


ジェットが形成される時の環境の違いにより「硬質ジェット」は塩水に沈下し堆積したものと言われ、「ソフトジェット」は淡水に沈下し堆積したものと言われています。浸透圧や環境の関係で塩水の方はハードジェットになり、淡水の方はソフトジェットとなるようです。(たとえ海から採取されても形成時の環境が湖水である場合もある)

一般に海水沼に堆積したものは綺麗な上質のジェットになると言われています。

写真 : 日本産出天然ジェット

原石の状態(未研磨)でありながら

すでに漆黒の艶が見てとれます

樹木や植物の痕跡を残した綺麗なジェットで

見た目は重そうな塊ですが

驚くほど軽いのが特徴です

※【英国のウィットビー地域で発見されたジェットは、太古の海水沼に堆積し圧縮・加熱された綺麗なジェットであると有名です。】

世界的にはこの綺麗なジェットの認識が広く有名で、地球の変化・太古の歴史の中での稀な条件が整い産出しました。

ただし約100年以上も前に枯渇し空白期間が続いたせいでジュエリーの専門家ですら本物を手にし割ったり削ったり、まして自信で彫刻してみた方は皆無で本物を語れる人は少ないようです。

確かに、この地球の自然が作り出す偶然的条件下で形成されるジェットですが、他の地域では絶対に採れないとは断言できません。何故なら人知れず日本にも未発表の稀な偶然的条件下のエリアが存在し、古代の地質年代と判明しているその限定された所からジェットが採取されています。

尚、ジュエリー業界(宝石学会)で一部の国や専門家から反対の声もあったようですが、炭鉱でジェット形成に近似した条件の部分から産出した石炭になる手前の強粘度の瀝青炭もジェットとして扱われているようです。ただ、この副産物の炭鉱産ジェットも炭鉱の閉山に従い市場に出回ることがなくなってきています。